活性炭はさまざまな物質を吸着する性質があり、安価で入手しやすいことから水道水処理など幅広い分野で利用されています。
一方で、ある浄水場において高濃度のPFOSおよびPFOAが検出され、その原因は水源近くで長期保管されていたPFOS等を含む使用済活性炭からの溶出と考えられています。
この事態を受け、環境省は2025年3月26日付で 「PFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭の適切な保管等」に関する通知を出すなど、管理の重要性が高まっています。

-ソックスレー抽出法の可能性-
ANALYTICAL METHODS FOR PFAS IN ACTIVATED CARBON
近年、環境や健康への影響が懸念されている PFAS(有機フッ素化合物)の処理は、大きな社会的課題となっています。特に、除去技術として広く利用されている活性炭において、使用後に残留するPFASの量を正確に評価する方法は、いまだ十分に確立されていません。
本事例では、当社が実施した「使用済み活性炭中のPFAS分析方法の検討と成果」を紹介します。
活性炭はさまざまな物質を吸着する性質があり、安価で入手しやすいことから水道水処理など幅広い分野で利用されています。
一方で、ある浄水場において高濃度のPFOSおよびPFOAが検出され、その原因は水源近くで長期保管されていたPFOS等を含む使用済活性炭からの溶出と考えられています。
この事態を受け、環境省は2025年3月26日付で 「PFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭の適切な保管等」に関する通知を出すなど、管理の重要性が高まっています。
本検討では、活性炭中のPFAS分析方法の有効性を確認することを目的に、以下のガイドラインに基づいて試験を行いました。
抽出溶媒に 0.1%ギ酸-MeOH、0.3%アンモニア-MeOH を用いて、振とう-超音波抽出法により、活性炭に吸着させたPFOS, PFOA, PFHxSの分析を試みました。
しかし、これらの手法ではPFOSなどを十分に回収できないことが分かりました。
※1:サロゲート物質とは、本来調べたい物質の代わりに使われる「代理の物質(安定同位元素標識体)」のことです。
例えば、炭素元素を13Cに置換されたPFASは自然界に存在しないが、分析したい物質とほぼ同じ物理化学的性質であるため、抽出や精製において同じ挙動を示します。この特性によって分析操作に伴う回収率の補正や、測定値の精度・正確性の向上が可能となります。
この課題を解決するために、ソックスレー抽出を用いた分析方法を検討しました。
あわせて以下の点についても評価を行いました。
測定対象物質はISO 21675の対象30成分に加え、炭素数1~3のTFMS, PFEtS, PFPrSを含む計33成分としました。
またサロゲート物質は、ISO 21675に準拠した24成分を用いて補正を行いました。
振とう-超音波抽出によって、5種類の粒状活性炭を対象に24成分のPFASサロゲート物質の挙動を確認したところ、PFASと活性炭の種類が抽出効率に影響することが明らかになりました。
以下の点から、ソックスレー抽出法が活性炭中のPFAS分析に有効であることを確認しました。
0.3%アンモニア-MeOHを用いたソックスレー抽出によって、振とう-超音波抽出では抽出が困難であった、PFSAsや長鎖PFCAsなども抽出可能であることが確認できました。
本検討を通じて、ソックスレー抽出法は活性炭中のPFAS分析に有効であり、信頼性の高い測定結果が得られることを確認しました。
当社では、この成果を今後のPFAS分析サービスに活用し、使用済み活性炭に含まれるPFASの分析依頼に対して、より正確で信頼性の高い分析結果を提供してまいります。
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